キルリアンカメラ

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生体エネルギー?オーラ?

キルリアン写真(Kirlian Camera)というのは、高電圧(1万ボルト以上)、高周波(3000Hz前後)の電圧をかけた中で写真をとると、まるでオーラや生体エネルギーが撮れたかのようにぼわんとした美しい輝きが写真感板上に写る現象をいいます。

電気工学的には”リヒテンベルグの放電像”といわれています。なぜならば1700年代にジョージ・クリストフ・リヒテンベルグ(Georg Christoph Lichtenberg)がこの放電を発見したからです。

ロシアの科学者セミヨン・ダビドビッチ・キルリアン(Semyon Davidovich Kirlian)と彼の妻が1939年の偶然の発見からこの高電圧放電写真の研究をはじめました。セミヨン・キルリアンはクラスノダールで電気修理工をしていました。彼は研究所で働いていましたが、そこで高電圧療法(electrotherapy)の高周波装置のデモを見るチャンスがありました。
そこで患者の皮膚と当てたガラス放電板の間がわずかに光っていることに気づきました。彼はそこにフィルムを置くことで、放電を写真に取ることができたのです。

キルリアンは妻と30年に渡り、装置を開発し放電写真の研究をしました。彼らは静物と同様に生体の写真を高周波電流を用いることで成功しました。

キルリアンの業績は1970年に’Psychic Discoveries Behind the Iron Curtain’というシーラ・オストランダー(Sheila Ostrander)とリン・シュローダー(Lynn Schroder)が書いた本(邦訳タイトル「ソ連・東欧の超科学―新時代の超能力革命」)の中に掲載されました。
これが西側に多くの反響をもたらしたのです。

キルリアンはこの写真が医学的な診断ツールに使えると考えていました。
肉体上に明確な兆候が現れるより前に写真に現れるというのです。

生体の状態により、放電図が変化する。そのため「オーラが映っている」と主張する人達がいます。
もし、本当にオーラだったらタイヘンなことです。科学でオーラの存在は立証されていないのですから。
キルリアンが説明していることは、オーラとかバイオプラズマとか他のオカルト的概念を持ち出さなくても説明はつくのです。

冬に冷たい窓に手を近づけると窓が少し曇りますね。息をはぁ~と吹き付けてラクガキをした経験などは誰もがもっているでしょう。
キルリアン写真の実体はこの曇りです。手から蒸散する水分(汗)は、体内のさまざまな物質がイオン化して溶け込んでいます。
これが、高電圧の中で感光板に写るのがキルリアン写真です。
なんのエネルギーでもない証拠に、真空中(空気がない状態)では写らないことが実験で確かめられています。
対流を助ける気体がなければ放射されないのです。つまりキルリアン写真はオーラも生体エネルギーも写したものではありません。

それでは、あの有名な切り取った葉の部分もキルリアン写真に写っていた「ファントム・リーフ」はどう説明できるかというと、もともと完全な葉を撮影している時に、高周波電流によりすでに辺縁部に水分が噴出していたにもかかわらず、ふき取りもせず、次に葉をちぎり取って撮影したため、映りこんだと考えられるのです。

ファントム・リーフは山ほど撮影しないと起きない現象であることが実際の撮影者の間では知られており、だんだんいらついて杜撰な実験をした賜物といえるかも知れません。

とはいえ、キルリアン写真はまったく無意味かというとそうともいえないのです。

1970年代にアメリカのUCLAにセルマ・モスという博士がおられました。彼女はキルリアン写真に夢中になり、さまざまな研究をしました。彼女の著作は「生体エネルギーを求めて―キルリアン写真の謎(日本語) 」
として日本語で読むことができます。翻訳監修は井村宏次先生です。

しかしキルリアン写真はファントム・リーフの不思議さにマスコミが飛びつきどんどん堕落していきました。人の運命がわかるとか、性格がわかるとかオーラだといったことです。

セルマ・モス自身のテストの仕方にも問題が発覚しました。当時、キルリアン写真はもっぱらカラーフィルムの上で放電し作成していました。カラーフィルムは図のようにベースから赤、緑、青と積み重ねられていて放電はもっぱら青の部分に記録されます。赤色は電極からはねかえった放射が記録され、意味がないということだったのです。

キルリアン写真のあやしい美しさをもてはやすあまり、正当な科学者からはそっぽを向かれてるのかも知れません。

この記事の終わりでデジカメで取ったキルリアン写真を掲載していますが、色は青です。

それでも一定の成果をもたらしたことは間違いありませんし、異常発汗、逆に、適切な水分蒸発がない、ということを写真で検知できるという立派な機能があります。

1999年10月にロシア南部の腫瘍科学センターで癌検診を275人に行ったところ、85%の確率で癌を発見できたといいます。医学への応用は期待できるかも知れません。

キルリアン写真は原義に戻り、リヒテンブルグの放電現象を現代のテクノロジーで再現する機器が現れました。GDVといいます。さまざまなものから放射されるガスを撮影可能としたものだということです。

キルリアンカメラ

マインド・クラフトでも長年キルリアンカメラを製作してみました。

透明ガラス電極の入手が難しかったのですが、さすがアマゾン、入手できるようになったので制作してみました。
いろいろわかったことがあります。

装置の全体はこんな感じです。世界で売られているキルリアンカメラの平均的なところです。

電源のACアダプター、高電圧発生装置と透明電極、透明な台は下からカメラで撮影するために必須です。

ピンク色のケーブルは耐圧2万ボルトまで絶縁できる特殊なケーブルです。

コインや葉っぱなどの撮影をしてみました。
図を参照しながら読んでください。

最上段の青は透明電極です。

二番目の黒は対象物です。

3番目の緑の▼はアクリル板にのせるネジです。

灰色のアクリル板をとおして下部に電線を取り付けます。


これは簡単で、次のような写真が取れます。
暗くした部屋で装置の上からカメラでパシャリ。
私が撮影しました。
怪しい美しさです。

次に指のコロナ放電を撮ってみましょう。
次のようにはさみます。

オレンジ色は指だと思ってください。
人体をとおしてアースが取られますから、
もう一方の導線はターミナルからもテーブルからも外します。

でないと確実に電気ショックがあなたを襲います。

下の黒い塊はカメラのつもりです。電極もテーブルも透明でなければいけない理由が、人体からの放電を撮影したい場合、下からでないと撮影できないからです。

指を透明電極に軽くのせると小さく「ジリジリ」といいます。この状態でコロナ放電しています。
強く電極に押し付けるとなんの音もしなくなり、静かになってしまいます。

そしてコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)で撮影したものがこれです。

この写真の撮影時の条件ですが、ISO3200、F5.0、露光4秒です。もっと露光は短くてもよいかもしれません。(Canon PowerShot G9X)

条件を変えてみました。ISO6400, F2.0, 露光1/10秒です。

世の中の期待に答えられているのではないでしょうか。(Canon PowerShot S120かなり古いものですが、キレイに撮れます)

えらそーに言えるほどデジカメについて知らないので改善の余地はまだあります。
少なくともコンデジでマニュアルモードがあり、ISO12600まで設定可能、F2.0前後まで設定可能、シャッタースピードも変えられるものがよいと思います。
カメラをセットしてから撮影するので、タイマー付きのほうがいいです。(って今のデジカメでタイマーないものってあるのかな?)

一眼レフはおすすめしません。台の下にカメラを入れるので薄いカメラのほうがよいのです。

当初、チルト液晶画面のカメラがいいかな?と思っていましたが、真っ暗な中で取りたいので、明るい画面は不要です。

iPhone SE2ではシャッタースピードが調整できないこと、LIVE撮影で前後の写真から「長時間露光」エフェクトをかけても光がつぶれてしまうようです。
他のアプリSlow Shutterでも試しましたが、カメラの感度が悪いのでしょうか、写りません。
これも大事な発見でした。
特殊な条件での撮影になるとスマホは難しいかもしれません。

とはいえ、キルリアン写真をデジカメで撮れるんです!

この装置は高電圧を扱うため、さっぱり売れませんでした。
受注があれば作ることはできるかもしれません。部品が残っていれば、ですが。。。
お問い合わせください。

工房こぼれ話

高電圧を扱うため、安全には留意しました。効果はほしい、でも安全でなければならない。ここでテスラコイルなんてもってのほかです。
とくに指の写真を撮るのには難儀しました。
ビギナーズラックで一度は取れたんです。(写真の指の周りを見てください。)
青い放電が見えますよね。
ところがなかなか再現せず苦労しました。
伝説を聞きかじっているのと、実際に作ってやってみるのでは大違いです。